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Ritter氏新産児剥脱性皮膚炎の抗生物質による治験
田邊 紀夫
1
,
鎺 脩
1
,
樋口 三千人
1
1長崎県立出島病院
pp.607-610
発行日 1955年9月1日
Published Date 1955/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491201501
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緒言
Ritter氏新産児剥脱性皮膚炎は,一般に予後が悪く,山口1);皆見;片山等の本邦戦前に於ける症例の統計的観察によると,その30〜70%は死の転帰をとると報告されているが,戦後Sulfonamid,Penicillin,Streptomycin等と相次ぐ抗生物質の登場により,本症の予後は著しく改善されて,斎藤・吉田2),野原3),土肥・平山4),市橋・大岡5)等はPenicillin治療により治癒日数の著しい短縮と死亡率の著減とを報告している。併してこの場合本症病原体と考えられる葡萄状球菌のPenicillinを初めその他の諸種抗生物質に対する耐性獲得能を考えると,かかる耐性株による本症の出現もあり得るのではなかろうか,従つてかかる場合には可及的早期に,細菌学的に原因菌の諸種抗生物質に対する耐性を検定し,感性藥物に依る適正な治療の開始が望ましい事と考えられる。又抗生物質に対する耐性株には,一般病原性の低下が考えられている様であるが,その場合本症の臨牀所見の変化等も併せて注目せらるべきものではあるまいか。
著者等は最近本院産婦入科に於いて出産した新産児と,本院皮泌科外来を訪れた生後7日の新産児とに相次いで本症を認め,水疱並びに流血中よりPenicillin耐性株を分離し,比較的強く感性を示したStreptomycin 及び Chloromycetinにより初めて治効を得たのでこゝに報告する。
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