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限局性線維性硬化型腎結核の1例
一井 治夫
1
1日本醫科大學泌尿器科教室
pp.157-162
発行日 1954年3月1日
Published Date 1954/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491201168
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緒論
Wildb lzは慢性腎結核症の病理學的分類上特に線維性硬化型を別け,結核腎剔出例中甚だ稀に遭遇する病型としている。此の事は本邦に於ける多數の腎結核症に關する統計的報告,特に病型分類を行つた小泉(小池,石川の報告例を含む645例),佐谷,瀧川(41例),中川,小池(81例),北川,岡部(170例),鋤柄(285例),阿久津,小山(50例),波戸(120例),富川(422例),岡田(81例),北川,馬越,岸(190例),千原(35例),伊賀(100例),井上,渡邊(32例),廣田,石渡(167例),小田(361例),西田(330例),外塚,笠(289例)等の文献中より將又その他の症例報告中より同型の記載を拾うに,自驗例を加え僅かに19例(第1表)を算するに過ぎない事によつても頷かれる。その病理學的所見に就いてはWildbolzの記載の他尚2,3の見解が追加されている。腎結核症の病型分類はWildbolzにより一應體系が整えられたが,各病型間には移行型存在し甚だ複雑多様であり,本型の場合もその成因機序と共にその所見の解明の餘地多きにも拘らず本症例は稀有疾患のため詳細な報告は少い。
私は偶々診斷確定に當り反覆検査を行い,腎剔出術により得たる剔出標本を組織學的に検索して,上下兩極部に限局した線維性硬化型腎結核である事を確定し且つ病理組織學的所見より腎結核進展機序に對する示唆を得たので,茲に報告する。
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