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狼瘡癌の1例
鳥山 悌司
1
,
小原 俊夫
1
1昭和醫學大學皮膚科教室
pp.81-83
発行日 1954年2月1日
Published Date 1954/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491201147
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本邦人の狼瘡癌發生は頗る稀有なるものとされ現在迄の報告は尼ケ崎(1935)の第1例以來本症例を加えて13例に過ぎない。最近宗像は狼瘡癌の統計的觀察を行い,本邦人症例に就ても詳細なる觀察を行つているから,茲では症例を追加するに止める。尚本例は尋常性狼瘡を治療中病巣より癌を發し,癌發生の經過を觀察し得たもので興味ある症例と思われる。
症例 布施某女,26歳,附添婦,初診昭和24年12月29日,家族歴には癌の素因無く他に特記すべきこと無し。既往症は生來健康で特に記するものは無い。現症として17歳の春頃から右耳下に小さな斑を生じ,自覺的には輕度の掻痒と疼痛があつた。この斑は2年間あまり増大しないで經過したが19歳の冬頃から周圍に向つて擴大を始めたが,夏期には割に病巣が擴大せず冬期になると病勢が盛んになるような氣がした。かくして主として紅斑と鱗屑をもつ斑が初診時迄に右耳,右頬,鼻部,頸部等を侵し,この間斷續的に醫療を受けていたが別に治癒に赴く樣子は見られなかつた。
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