特集 性病
淋疾の治療成績
土屋 文雄
1
,
日東寺 浩
1
1東京遞信病院泌尿器科
pp.641-646
発行日 1952年11月10日
Published Date 1952/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200854
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治淋藥の進歩發達につれて淋疾の冶療法も段々と改善され,治療成績も向上して來た。嘗ては自然の成行に任せざるを得なかつた淋疾もサルフア劑の發現當初は劃期的な著效を呈したのであるが淋菌の之に對ずる馴化と共に抵抗性を生じ,サ劑の改良は勿論次第に用量の増加が必要となつて來た。然るにサ劑には相當不快な副作用があり,その用量には限度があるので,その治療成績は漸く低下の傾向を示した。
是に代つて登場したペニシリンは,その格段の效果と殆んど副作用の皆無な事からサ劑を駆逐して治淋藥としての主役を演ずるようになつた。當初は頻回注射の煩雑さがあつたが段々の改善により所謂一發療法も可能の状態となり,治療の簡易化が齎らされた。然し乍らこゝにも亦その亂用と不適當な使用によつて漸く抗ペニシリン性淋疾の存在が問題となるようになり,事實逐年使用量の増加を見るようになつた。サ劑を初め各種ペニシリンの個々の治療成績については我々も既に度々發表し,更に又新しい試みとしてペニシリン以外の新抗生物質による治淋成績も多數例に就て検討發表してある。これ等は個々の藥劑の限られた量と方法による成績であり,同一藥劑に就ても報告者によつてかなり治癒率に相違が見られるが,治療成績なるものが多くの要約によつて支配されること及治癒の目標を何處におくかによつてこのような差異が生ずるのである。我々はこゝに淋疾そのものの治療成績即ち外來診療の實態を回顧して大方の御参考に供しようと思う。
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