特集 性病
非淋菌性尿道炎
田村 一
1
1慶大
pp.647-651
発行日 1952年11月10日
Published Date 1952/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200855
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まえがき
淋疾の治療が専ら局所療法で行われた時代に於ては,非淋菌性尿道炎というものは,あまり問題にされなかつた。というのはその症状が淋疾に比べて概して輕く,而も治癒し易かつたためである。ところがスルフアミン劑,續いてペニシリン等の抗生物質が發見され,淋疾の治療が劃期的な進歩を示した結果,淋疾は大體一撃療法で全治せし得ることになつた。こうなつてみると,その原因が單一でないために非淋菌性尿道炎の方が,むしろその治療が簡單でなく而もより長い時日を要することになつた。この事實は淋疾の診斷により愼重でなければならぬことを反省させ,同時にこの非淋菌性尿道炎についての原因的検索が新しい問題として關心を深めることになつた。一方淋疾の新療法が普遍化すると共に近來抗療性淋疾,或は抗ペニシリン性淋疾の問題が擡頭して來た。然るにこれ等の抗療性淋疾についての研究をみると,その多くが診斷の出發點に於て他の菌を淋菌と誤認したり,淋疾に續發した非淋菌性尿道炎を淋疾の未治に聾歸せしめているものであると報告している。抗療性淋疾は確かに重要な問題であるが,これを解明するのには是非とも非淋菌性尿道炎について,より深い見識と研究とが必要である。
かゝる意味に於て,この新しく脚光を浴びて現れて來た非淋菌性尿道炎につき,その概略を述べることは臨床醫家に參考となることと思う。
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