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上眼窩神經の肥厚に依り癩と診斷された1例について
犀川 一夫
1
1國立療養所長島愛生園
pp.324-326
発行日 1952年7月1日
Published Date 1952/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200753
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最近promin及び其の他の化學療法劑の發達に伴い,癩の化學療法は著しい進歩を示した。然しながら癩の治療にあたり注意すべきは種々なる知覺,運動神經障害の恢復と云う點に於てはある限界のある事を認めなければならない。一體末梢神經が癩菌に侵されるや知覺,運動神經障害を起し,漸次痛覺,温覺の脱失をはじめ橈骨神經麻痺に依る懸垂手,正中神經麻痺に依る猿手,尺骨神經麻痺に依る鷲手,腓骨神經麻痺に依る馬足,又副神經麻痺すらも起すに至り,斯る種々なる神經症状の結果は癩特有の奇型を殘し,肢體の不自由を惹起するに至るのである。一度斯る奇型を起すやその恢復に至つては極めて望み難いもので,我々は癩の治療にあたつて此等の神經症状の進展せざる早期に癩を發見し,早期に加療し以つて病勢を輕症のうちに止め,奇型を最小限に止めんとして從來より癩の早期發見と其の加療とを強く主張して來た。癩の早期發見と加療は癩豫防の上からは勿論,その豫後からも必要な事で今後ますます強調すべき點だと思う。現今癩の治療は早期のうちに療養所に入園し充分なる治療を一刻も早く加えるべきで,從來の如く重症になるに及んで初めて療養所に入るが如き偏見は捨てるべきである。
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