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緒言
結核に抗菌性ある物質としてパラアミノサリチル酸(P.A.S.)はLehlnann,Bernheimの基礎實驗に引き續きLehmann,Vallentin等によつて臨床報告がなされて以來,結核の新治療藥として一般に認められるに到つた。特に最近では我が國に於ても合成に成功し,各方面に盛に應用されている。我が教室に於ても皮膚泌尿器結核患者の一部にP.A.S.を應用し,相當の效果を得つつある。P.A.S.は大量を而も連續投與するも副作用の少い事が其の特徴の一つとされている。副作用としては一般に惡心,嘔吐,下痢,脱毛等が記載されているに過ぎない。一方ズルフォンアミド劑の1種として創製せられたProminはFeldman及びHinshawが海猽の實験的結核に對し既往に見られない效果をあげて以來,結核に對する新治療藥として提唱された。然し臨床的には賛否交々であつて,結核に關する限り未だ確實とは言い難い。然し此の癩に對する應用はFaget以來その優れた效果が認められ,本邦に於ても谷奧,鳥川兩氏の報告以來數多くの治驗例が報告せられ恰もその特效藥の如き感があるProminも他のズルフォンアミド劑に比しては割合に副作用が少く,連續投與を行つても害が少いとされている。我が教室ではP.A.S.と單にProminをも各種皮膚泌尿器結核に應用し,殊に皮膚結核に對して顯著な效果を收めた事は既に大村,高橋の報告した所である。かくP.A.S.及びPromin共に最近結核又は癩の治療藥として喧傳せられ,而も副作用の少い事がその特徴の一つとされている。且Prominによる發疹例は2,3報告があるが,P.A.S.によつて中毒疹を惹起せる報告は未だきかない。余は最近一泌尿器結核患者に對し,先ずP.A.S.を投與して著明な中毒疹を生ぜしめ,發疹の消褪後Prominを投與せる所再び同發疹の再發を來した1例を經驗した。
症例
松○君○ 27歳 女子
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