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嚢尾虫症の1例
船橋 俊行
1
,
仁木 富三雄
1
1國立東京第一病院皮膚科
pp.335-336
発行日 1950年8月1日
Published Date 1950/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200384
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症例
26歳男子。家族歴及び既往歴には特記すべき事なし。患者は戰爭中,昭和18年から19年9月まで滿洲に,引續き21年10月までは沖繩にあり,兩地に於て屡々豚肉を食べる機會があつた。昭和20年10月頃から,自分では氣付かなかつたが,時々夜半睡眠中に痙攣發作のあるのを周圍の人々に注意され,又その頃から時々眼がちらついたり,劇動後に眩暈を覺えたりするようになつた。又此の間入浴時,背中その他の皮膚に腫瘤のある事を人に注意きれたが,自覺症状はなかつた。21年9月復員。22年7月自轉車に乗つていて突然意識不明となり,轉落したが,此の時輕い眩暈及び不快感の前驅があつたという。23年8月には睡眠中癩癇樣發作があつたが,これは自分では全く識らなかつたという。同9月皮膚腫瘤と癩癇樣發作とを主訴として來院。
現症。體格中等大,榮養良好,顔貌正常。頬部,側顎部,胸部,下腹部。背部,兩上肢等主として上半身各所の皮下に,豌豆乃至小指頭大,長めの卵形をなす腫瘤を觸れること總計22個。皮表に異常なく,觸診上彈力性硬,皮膚及び下牀と癒着せず,よく移動する。自發痛を缺く。
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