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所謂原因不明の皮膚色素沈着症に就て
蕭 秀河
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1長崎醫科大學皮膚科泌尿器科教室
pp.190-194
発行日 1947年12月20日
Published Date 1947/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200053
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我が邦に於て從來一種特異の皮膚色素沈著症として注目されてゐるものがある。即ち大正7年の野口氏から竹之内,田代,高橋,瓦,森山,村井氏を經て最近の矢野氏,靑島氏に至るまで屡々報告されてゐるのが夫れで,Chloasma idiopathic-um disseminatum lenticulare(野口氏),多發性斑状色素沈著症(森山氏),多發性斑状色素増殖(土肥章司氏),特發性後天性斑状色素沈著症(皆見氏)等,命名の提議があるがなほ何れとも決定されず,最近靑島氏は單に原因不明の色素沈著症と呼んでゐる。今回余も亦これに屬せしむべきものとして次の例を經驗したが,ただ此處では色素斑が臨牀上明がに紅斑によつて先導されることが異樣に思はれた。併しこの現象は一方その組織に表皮色素の眞皮内への流下,沈著像のあることとともに從來報告例の一部にも確かにその氣配が窺はれるのであつて,ただ本例はこの兩現象を偶々甚だ明瞭に具へたもので,進んで夫れは本症の本態がなほ不明な一種病的過程に基づく表皮基底細胞の變性,延いてその色素保有能の喪失にあることを語るものと思はれ,即ちその意味で本例は本症或は尠くとも本症色素斑の出現機序に1つの解釋を提供するものとして茲に報告する次第である。
井上某男,37歳。昭和18年6月22日初診。
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