特集 呼吸器薬物療法—現場ではこう使いこなす
序文
長 澄人
1
1大阪府済生会吹田病院・呼吸器病センター
pp.4-5
発行日 2021年2月1日
Published Date 2021/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1437200417
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呼吸器疾患は感染症,腫瘍,間質性肺炎などのびまん性肺疾患,喘息・アレルギー,COPD,膠原病,多くの希少疾患など極めて多岐にわたり,呼吸器科医が使いこなすべき薬も非常に多く,若手医師にとっては最新の治療法を習得するのはなかなか大変である.
鎮咳薬・去痰薬や気管支拡張薬は以前から呼吸器外来で使用する頻度の高い薬剤であるが,診断や症状による使い分けに注意を要する.気管支喘息やCOPDにおいては吸入薬が治療の中心となっているが,吸入ステロイド,LAMA,LABA,各種合剤が上市され選択に迷うことも多く,また特に高齢者では丁寧な吸入指導が必要である.高容量吸入ステロイドでもコントロールできない難治性/重症喘息に対する抗体製剤も4種類が使用できるようになり,使い分けが必要となった.呼吸器科医は各種抗菌薬・抗真菌薬に精通することが求められるが,非結核性抗酸菌症が増加していることから抗酸菌治療薬に対する知識も今なお重要である.肺癌治療は分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬が導入されて進歩が著しく,殺細胞性抗癌剤や放射線治療との組み合わせを考慮して最良の治療法を選択する必要がある.膠原病による肺病変を呼吸器科で治療することも多いが,ステロイドや免疫抑制薬の用量調節や副作用管理には十分な配慮が必要となる.また臨床現場では疼痛緩和薬や漢方薬も必要に応じて使いこなすことが求められ,比較的新しい領域である肺高血圧症治療薬や肺線維症に対する抗線維化薬も今や呼吸器科医にとって必須のものとなっている.
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