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2001年9月16日から20日,オーストラリアのシドニーで開かれた世界脳神経外科学会は,オーストラリアという地の利もあって,日本からも大変多くの参加者があった.この学会の前にケアーンズで機器学会が開かれ,またアデレードでは定位機能神経外科学会が開かれた.ケアーンズでの学会は信州大学の小林茂昭先生がプログラム委員であったようで,私の方にも下垂体の手術法について発表するよう推薦していただいたが,丁度アデレードで同時に定位機能神経外科学会が開かれていたため,私は後者に参加し,前者には教室の川俣君に発表してもらった。個人的にはアデレードは以前に世界疼痛学会が開かれ,鳥取大学の竹信君と参加していたので,ケアーンズに行きたかったが,岡山で日本の第24回定位機能学会を開かせていただくことになっていたことと,最近の定位機能領域の著しい進歩もあり,私はアデレードに参加した.
この学会では最も熱いトピックスはもちろん視床下核の刺激療法であった.この領域の先駆者はグルノーブルのBenabid教授である.彼は私がパリ,サントアンヌ病院のタレラック教授のところに留学していた1974年に同病院に1カ月半visit-ing fellowとして来ており,旧交を温めることもできた.彼はその他にも難治性てんかんの視床下核刺激・またシドニーでは側頭葉てんかんに対しての切除ではなく,遮断外科の成績を発表するなど,まさに油の乗り切った今をときめく素晴らしい研究者として自他ともに認められている存在である.ちなみにこのパーキンソン病に対するSTN刺激は,その長期成績(5年以上)とともに本年度のAANSにおけるplenary lectureとして第1番に発表された.その他にてんかんの視床刺激なども報告され,定位学会も今や破壊ではなく,刺激治療が主流を占めるようになったといっても過言ではない.またフランスマルセイユのレジスが行っているガンマナイフによる側頭葉てんかんの治療も注目を集めていた,この分野では医学・工学など学際的な協力がこれからの発展には必須のものと思われた.なおこの学会では群馬大学大江名誉教授が長年の功績を認められ,シュピーゲルワイシスメダルをライチネン教授とともに受けられたのは大変名誉なことと思った.また,世界定位機能神経外科学会の役員が変更になり,大江教授に代わって,Asia-Australasia地区のVice-presidentとして不肖私が推薦され承認された.今後の責任の重さを痛感している.
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