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I.はじめに
中枢神経疾患における現代医学の診断学はめざましい進歩をとげた.この発展の根幹をなしたのが,1972年開発のCTスキャンである6).CTスキャンの登場以前の中枢神経疾患に対する診断学はCT画像の出現により大変革を来たし飛躍的な進歩をとげた.脳組織,脊髄はもとより全身の各臓器が解剖学的に明瞭に画像として直視できることは診断医学の画期的な進歩であった.このCTの出現は医療工学の急速な発展をもたらし,1980年代には第二の画像革命であるMRIの発明につながった.しかし,このMRIの素地はすでに1946年にPurdelとBlockにより発見された核磁気共鳴現象が母体となっており,1980年代に生体組織のプロトンNMRが断層画像として表示されたものである.このCT,MRIは代表的な静止画像として各種脳神経疾患の形態的病変を二次元画像として明瞭に描出・解明した.さらに1990年代に入り,CTとMRIのハードの高速化への改良による動画的画像化と三次元ソフトの付加が急速に進んでいる19).MRIにおいては機能化を目指してfunctional MRI開発の試みが最近の2-3年多施設から報告されている1,33,34).
脳組織を解剖学的に明瞭に描出するCT,MRI画像は医学情報として極めて詳細なデータを与えてくれる.しかし,両画像は本質的には静止画像であって,高次機能を有する脳細胞の様々な機能変化を画像上に表示するにはいまだ至っていない.機能的画像の代表とされるものはSPECT,PETであるが,機能画像として期待され登場したPETは,10数年を経た今日でも経済的物理的諸問題から,一部の施設での使用に限られており,一般臨床医学に広く普及するまでには至っていないのが現状である.一方,いま一つの機能画像であるSPECTは,めざましい改良により機能的画像診断機器として期待できるものとなった.3検出器型SPECT装置の開発と高性能コンピュータの改良により,きわめて高速スキャンが可能となり,かつデータの収集・解析能力の飛躍的進歩により脳循環・代謝を検索する機能的画像診断機器として,あらためて注目されてきた.著者らは機能的脳三次元画像の作成を目的として,最新の高速スキャン性能をもつ脳SPECTデータを最大限利用し,かつ様々な脳病態に対応して高速スキャン・プロトコールによりデータ収集・解析を行い,汎用可視化ソフトウエア・ApplicationVisualization System Medical Viewer(AVS-MV,K.G.T.社)を利用して三次元脳SPECT画像の作成を報告してきた1,15,16,18,21,23-27,32).そこで,現在脳神経領域で広く使用されている画像診断機器につき,総括と将来展望を述べてみたい.
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