扉
うまい学会発表のコツ
植村 研一
1
1浜松医科大学脳神経外科
pp.397-398
発行日 1997年5月10日
Published Date 1997/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436901383
- 有料閲覧
- 文献概要
学会発表に限らず,講演のうまさは天分や素質によるのではなく,緻密な計画性と自己訓練による.私が医学生の時,某教授は講義が下手でボソボソ声で何を言っているのかさっぱり分からなかった.しかしその先生の書かれた教科書は大変明快で分かり易かった.論文執筆と講演との大きな違いに気付かなければ,うまい学会発表はできない.
同じ研究成果を論文にする場合,頁数の制限から,キーワード密度の極めて高い短文で書かざるをえない.読者は難解なら読み返せば良い.しかしこんな文章を棒読みされたら誰も分からない.演説原稿は分かり易い口語体の文章で書かねばならない.論文では図表数も極端に制限されるので,一つの図や表にできるだけ多くのデータを詰め込まざるをえない.こんな図表をそのままスライドにしたら最前列の聴衆すら分からない.「読みにくいスライドで恐縮ですが……」と言った言い訳ほど無礼な行為はない.学会の口頭発表で制限されるべきは演説時間であって,決してスライド枚数であってはならない.盛りだくさんの論文用の図表はそれぞれ複数のポイントを絞ったスライドに作り直す.日本の学会でスライド枚数を制限する会長がよくいるが,無理解も甚だしい.
Copyright © 1997, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.