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1996年6月26日−29日まで,フランスのパリでCAR'96(Computer Assisted Radiology)の第10回国際シンポジウムと展示がLe Palais des Congres de Parisの国際会議場で開催された.コンピュータ外科学会Computer Aided Surgery(CAS)は,コンピュータ支援診断と手術治療との融合を目指して,CARとのjoint meetingを開催した.同時にComputer Assisted Ortho—paedic Surgery(CAOS)とComputed Maxillo-facial Im—aging(CMI)も開催された.オープニングセレモニーとして,ベルリンとパリを衛星放送で結び,双方向3次元立体映像によるライブ中継が行われた.内容はベルリン(Humboldt-Universitaet)からの内視鏡手術による肝癌のbiopsyのデモと組織標本の顕微鏡(Zeiss)映像をパリより遠隔操作するものである.手術の内容自体は特に目新しいものではなかった.しかし,ほぼリアルタイムに動画が送られたのは驚異的である.遠隔医療の幕明けも近い予感がした.CASは,口演33題,ポスター24題である.3D Imaging and Graphicsのセッションは9題で,形成外科の顔面手術のシミュレーション,脳の変形のシミュレーション,術中診断とナビゲーション,in-tervention中の血管カテーテルの光学式3次元位置センサーによる位置コントロール,大動脈へのステント挿入のプランニングと位置コントロール,3次元CTなどであった.3D Modelsのセッションは6題で,全て顔面奇形の歯科口腔外科,顔面形成外科手術のための光造形モデルを含む3次元シミュレーションであった.
Navigation/Guidanceのセッションは9題で,術中MRI,ロボット手術関係,MRI誘導血管カテーテル,画像誘導定位脳手術による皮膚基準マーカー・3次元CT・光学式3次元位置センシングの精度,CT-MRI共用基準マーカー,血管カテーテル3次元ナビゲーション,骨折・靱帯再建手術,コンピュータ外科による心臓周辺穿刺など.Navigation/Virtual Realityのセッションは9題で,バーチャルリァリティによる内視鏡低侵襲手術のためのトレーニングシステム,ロボット手術支援のための骨切開プランニング,眼鏡無し3次元立体内視鏡手術,遠隔支援による定位的内視鏡手術,顔面形成手術の術中ナビゲーションの現状と将来展望,術中CT誘導による変形対応手術,コンピュータ外科ナビゲーションの精度,VISLANナビゲーションシステムの臨床精度などである.ポスターセッションは,volumegraph(3次元画像術中投影ナビゲーションシステム)をはじめ,ナビゲーション技術,CADデータによる骨形成手術,3次元立体顕微鏡手術システム,バーチャルリァリティ技術,3次元画像による術前・術後の評価,低侵襲手術など多彩な内容であった.これらを俯瞰すると,コンピュータ外科はバーチャルリァリティ・ナビゲーションシステム・プランニング・シミュレーション・レジストレーション・遠隔手術・3次元立体顕微鏡—内視鏡手術・ロボット手術.術中MRI-CT誘導手術などを駆使した低侵襲手術を実現するために,ロボット工学のみならず生体材料,医用画像工学,認知科学,virtual real-ityなど広範な分野にまたがる手術工学(surgical engine-ering)と,それを使いこなすための先端工学外科学(advanced technological surgery)へ収斂していくように思われる.
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