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3月号の総説,和歌山県立医大.板倉先生の“頸部交感神経節の脳内移植”を興味深く読ませていただいた.脳内移植の研究は1979年Bjorklundらの報告により火が付き世界中に広まった.1985年にはBacklundらにより自己副腎髄質細胞を用いて世界初の臨床応用が行われた.その後,副腎以外に胎児中脳黒質細胞の有効性も報告され,多くの脳内移植手術が行われている.国内での状況をみると,1987年,自己副腎移植が福井赤十字病院で最初の例として実施され,1992年には岡山大学で副腎と肋間神経をcograftした手術を行っている.和歌山医大では移植組織として頸部交感神経節に着目し,1991年臨床応用を行い,その後も症例数を増やしている.結果は満足できるものばかりでなく,それぞれの移植組織にたいして問題点が挙げられている.副腎に対しては生着率向上,胎児では倫理的問題などがあり,臨床応用が確立するためにはまだ多くの課題が残されている.
われわれは新たな移植組織として遣伝子導入細胞の研究に取り組んでいる,皮膚線維芽細胞を採取し,遣伝子操作を加え,catecholamine産生細胞を作り出し,副腎や胎児組織と同様に脳内に移植しようというものである.自己の皮膚を用いるため免疫拒絶反応や倫理的問題は解決される.また線維芽細胞は容易に大量培養・保存できるため,必要時に必要量供給することができる.遣伝子操作により産生量の調節も可能である.理論的には理想的な移植細胞ができる.本年1月,新潟大学医学部の倫理委員会において国内初の遣伝子治療の臨床応用にゴーサインが出された.脳神経外科の領域でも遣伝子治療が行われる日が近いであろう.われわれの研究室でも“世界で最初の遣伝子導入細胞を用いたParkinson病の治療”を目指し,脳内移植と遣伝子治療の研究に励んでいる.
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