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頭蓋内病変に対する開頭部位の決定には,CTにて,OM lineより計測する方法,病変部直上に金属を接着させ撮影する方法,脳血管造影上の腫瘤陰影を頭皮上に投射する方法などが用いられてきた.しかし,水平断しかできないCTや頭頂部が拡大されてしまう血管造影では,頭頂部の病変ほど,病変中心と開頭中心のずれが大きくなってしまい,困難を生じる.コンピューター利用脳手術支援システムは,高価で,利用できる施設は限られる.
われわれは,脳外科で降圧剤として頻用され,入手が容易なNifedipine capsule(Adalat)をmarkerとしたMRによる開頭中心の決定を試み,満足すべき結果を得ている.油性製剤であるNifedipine capsuleは,溶媒としてのグリセリンがその内容の主成分で,これがT1強調像で高信号に描出される原因である.大きさも10mg剤が17mm×7mm,5mg剤が9mm×6.5mmと,mar—kerとしても適切と思われる.通常,剃毛後,CTや血管造影での病変部位の計測を参考に,開頭中心と推定される部位にNifedipine capsuleをテープにて接着し,MRによる水平断・矢状断・冠状断を撮影して,そのずれを計算しながら,Nifedipine capsuleの位置を修正し,再撮影を繰り返すことにより,3次元的に開頭中心を決定し,その部位をマジックでmarkingして終了する.開頭の大きさは,病変の種類や術者の考え方で異なってくる.最近の脳腫瘍3例(傍矢状静脈洞部髄膜腫1例,頭頂葉転移性脳腫瘍1例,頭頂葉神経膠腫1例)いずれも,markerとしてのNifedipine capsuleの描出は満足すべき結果であった.Fig.1に頭頂葉転移性脳腫瘍の1例を示す.必要最小限の範囲の開頭が可能となり,脳表面に変化のない場合でも,開頭中心と腫瘍中心の一致を利用し,正確な脳表の切開も可能となった.特に頭頂部の病変に有効と思われた.手術時間の短縮とともに術者の心理的面への好影響も大きい.現在胸髄部など,脊髄病変への応用を検討中である.
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