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これは,私共の大学の前身である九州医学専門学校(昭和3年創立)の校歌の一節である.作詞は郷土の詩人,北原白秋である.広辞苑によれば,「仁」とは「礼にもとづく自己抑制と他者への思いやり」とある.医師をめざす若者の心がまえについて,白秋の強い念願がこめられた文言といえる.
医学がScienceによって支えられたArtであるということは良く知られている.脳神経外科領域においても,最近のScienceとArtの進歩には目を見張るものがある.私が入局した1970年当時,頭蓋内病変の多くはAir StudyやAngiographyで間接的にしか知り得なかった.しかし今では一目瞭然に画像上に描出され,病変の種類や性質まで明確に判定し得るようになった.かつて経験をつんだ脳神経外科医にしか判らなかったことが,今では初心者にも簡単に判ってしまう.以前にはとても手がつけられないと考えられていた部位や,手術不能と考えられた病変にも積極的に手術が行われるようになった、脳神経外科において,手術すなわちArtの占める比率がいかに大きく,しかも大切であるかは改めて言うまでもないであろう.少しでも手術適応を広げ,いかに安全かつ確実に手術を遂行するかということは,脳神経外科医にとって最も根本的な希求であろう.難しい手術の前日には過去の経験を思い出し,expertの方々の手術書を調べ,最近の学会のビデオ発表の内容を思い出しながら,万全の準備をととのえる.それにも拘らず,手術中思いもかけないアクシデントに遭遇することがある.また手術が無事終了しても,術前には予測し得なかった神経症状が新たに出現し,啞然とすることもある.この様な場合,手術の適応やアプローチの選択,さらに手術手技の1つ1つについて,自分の判断に誤りがあったのではないかと心を悩まし,深く反省する.このようなことは脳神経外科医の誰もが経験することであろう.
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