扉
綜合臨床医教育と脳神経外科
千ヶ崎 裕夫
1
1防衛医科大学校脳神経外科
pp.113-114
発行日 1990年2月10日
Published Date 1990/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436900019
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脳神経外科は臨床医学の中でも最も専門的領域と呼ぶのにふさわしい例としてよくあげられる.学ぶべき知識や技術は広く深く細かく,一般医が志したとしても自習することは難しく,まず簡単に手をだせる範囲をはるかに越えている.この事は脳神経外科が一般外科より専門領域として独立してきた歴史が証明している.過去に一般外科の人々が片手間に脳神経外科領域の疾患の手術を行って何と惨憺たる成績に終ったことか.脳神経外科の真の発展が自ら専門医であると自覚してそれに生きるという強い意志をもった事が最大の原動力となったのではないかと私は思う.現在脳神経外科の専門医の資格が外国でも日本でも他の領域に比べて,かなり厳しい訓練をつみ苛酷とも思われる試験を合格しなければ与えられないのはその内容からみて当然のことのように思われる.
一方,医学の専門化がすすみ細分化されればされる程,医学全体との関係が問題になってくる.特に臨床医学においては,我々は治療の目的は一つの病気を治すのではなく,病をもった一人の人間を扱っているという全人的治療が要求される.従って自分の専門領域のみに如何に精通していても狭い視野に囚われて全体を把握できない医師は医師としての資質が欠けているといわれても止むを得ない.
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