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●経鼻内視鏡手術に興味をもつすべての医師へ
最近の時代背景として医療の役割や機能分化が進み,より高度な専門的知識・技術が求められています.専門医,技術認定などの制度化も進み,若手医師は技術習得に目を向けがちですが,困難な手術の成功には,正確な診断(画像解析)と手術解剖の深い理解に基づく論理的思考が重要です.また,頭蓋底疾患は耳鼻咽喉科,形成外科,脳神経外科など複数の診療科が協力することにより,治療成績を大きく向上させてきた歴史があります.最近では,耳鼻咽喉科と脳神経外科の合同で行われる経鼻内視鏡頭蓋底手術は,画期的な低侵襲手術として,これまで到達不可能であった部位にもアプローチ可能となり,治療概念を大きく変えました.一昔前までは極めて治療困難であった疾患も,最近では合併症なく根治性の高い治療が行われるようになってきました.医療の役割や機能分化が進む中で,困難な疾患に対して,診療科の枠を越えて治療に取り組むチーム医療こそ,今後求められる医療の形ではないかと思っています.
さて本書ですが,内視鏡下鼻内手術に関して「初心者でも行える,わかりやすいプランニングと安全かつシンプルな手術テクニック」を基本概念として作成されています.さらに応用編として,経鼻内視鏡頭蓋底手術に関しても同じ概念で解説されています.耳鼻咽喉科が基本習得する鼻・副鼻腔解剖および手術もわれわれ脳神経外科では特殊な分野で,これまで系統立って学ぶことができる手術書はなかったため,本書がとても良い指南書になっています.本書を読んで興味深いと思ったことは,それぞれ意図することは同じでも違った表現で記載されていることであり,何気ない気づきがあることです.手術を理解・習得していく過程は個々で異なり,それぞれの段階でこの教科書を開いて確認することにより新たな気づきがあり,深い理解へつながるのではないかと思います.
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