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Ⅰ.はじめに
小脳橋角部には種々の腫瘍が発生し得る.日本脳神経外科学会「脳腫瘍全国集計調査報告2001-2004」によると,小脳橋角部腫瘍は原発性脳腫瘍の11%(1,511/13,431例)を占め,その内訳は,神経鞘腫72%,髄膜腫(WHO grade 1)20%,類上皮腫6%,その他(神経膠腫,上衣腫,髄芽腫,悪性リンパ腫,血管芽腫など)と報告されている.当科において,2013年5月から2015年12月の間に手術を施行した小脳橋角部腫瘍250例の内訳は,前庭神経鞘腫152例(61%),前庭神経鞘腫以外の神経鞘腫31例(12%),髄膜腫47例(19%),類上皮腫9例(4%),その他11例(4%)であった(Table).小脳橋角部腫瘍に対する手術アプローチは,外側後頭下アプローチ(lateral suboccipital retrosigmoid approach:LSO),経錐体骨アプローチ(anterior/posterior/combined transpetrosal approach, transmastoid approachなど)などが選択されるが,前庭神経鞘腫に対しては,当施設ではLSOが多くを占め(96%), LSO以外に経迷路アプローチ(translabyrinthine approach),中頭蓋窩アプローチが選択される.前庭神経鞘腫に対するLSOは,術野が広くオリエンテーションがつけやすいこと,腫瘍の大きさにかかわらず聴力温存の可能性を追求できること,中頭蓋窩アプローチのように顔面神経越しの腫瘍摘出にならないこと,持続顔面神経モニタリングを入れるスペースが得られることなどの利点がある20).
本稿では,最も頻度が高い前庭神経鞘腫およびLSOのための,術前・術中支援,および,成書に記載されることが少ない術後管理に関して,当施設での実際を中心に記す.
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