Japanese
English
総説
陽子線・重粒子線の現状と展望
Current Status and Future Prospects of Charged Particle Radiation Therapy
嘉山 孝正
1
,
根本 建二
2
Takamasa KAYAMA
1
,
Kenji NEMOTO
2
1山形大学医学部先進がん医学講座
2山形大学医学部放射線腫瘍学講座
1Department of Advanced Cancer Science, Yamagata University Faculty of Medicine
2Department of Radiation Oncology, Yamagata University Faculty of Medicine
キーワード:
charged particle radiation therapy
,
proton beam
,
heavy ion beam
,
radiotherapy
Keyword:
charged particle radiation therapy
,
proton beam
,
heavy ion beam
,
radiotherapy
pp.449-454
発行日 2016年6月10日
Published Date 2016/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436203309
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Ⅰ.はじめに
放射線は,電離作用(原子・分子から電子をはぎ取る作用)をもった,電磁波または粒子(原子の構成成分や原子核そのもの)と定義される.すなわち,どちらも高エネルギーであり(中性子は例外),電磁波の場合は波長が短く,粒子の場合には速度の早い状態である.
放射線の分類をFig.1に示す.電子は本来粒子であるが,独立して扱われる場合が多い.重粒子は以前は電子より重い粒子をすべて重粒子と呼んでいたが,現在では原子番号2のヘリウム原子核よりも重い粒子を指すことが多く,用語の混乱がみられる.実際の放射線治療で最も一般的に用いられている重粒子は炭素イオンで,わが国で重粒子線といった場合には,炭素イオン線とほぼ同義語になっている.
放射線の生体への作用で最も重要なものはDNAの切断である.このプロセスは水分子の電離により生じた活性酸素を介して,あるいは放射線が直接DNA分子に作用して発生する.DNAの切断が起きると,細胞内のさまざまな分子機構により,その修復が試みられるが,破壊の程度が大きい場合には,細胞の増殖が不能になり最終的に死に至る.DNAは正常細胞にもがん細胞にも存在しており,放射線により同様にダメージを受ける.そのため,放射線治療の成功の鍵は,いかにしてがんに選択的に放射線を集中させるかということになる.本稿では,がんに放射線を集中させる手段として最近注目を集めている荷電粒子線(陽子線,重粒子線)について,その特徴,現状,将来について概説する.
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