Japanese
English
総説
Neurosurgical Phlebology術後脳静脈還流障害(基礎と臨床)
Neurosurgical Phlebology:Prevention of Postoperative Venous Infarction
中瀬 裕之
1
Hiroyuki NAKASE
1
1奈良県立医科大学脳神経外科
1Department of Neurosurgery, Nara Medical University
キーワード:
phlebology
,
cerebral venous infarction
,
cerebral venous circulation disturbances
Keyword:
phlebology
,
cerebral venous infarction
,
cerebral venous circulation disturbances
pp.97-107
発行日 2015年2月10日
Published Date 2015/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436202962
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Ⅰ.はじめに
体動脈と体静脈はともに内膜・中膜・外膜の3層構造からなるが,体静脈は弾性線維組織を欠き中膜と内膜が薄く平滑筋や外膜も薄い.また,体静脈には弁があって逆流しない構造になっている.一方,脳皮質静脈は中膜を有せず内膜と外膜からなる極めて薄い血管で,また弁がないなどの特徴を有している.つまり脳の静脈血は逆流できる構造になっており,静脈路を閉塞しても側副血行路が機能すれば還流障害を起こさない構造になっている.脳の静脈血は最終的に橋静脈から硬膜で囲まれた硬膜静脈洞にそそぎ込むが,どこかの段階で静脈還流が障害されると脳は浮腫や静脈梗塞の危険にさらされることになる.
近年,脳神経外科領域において,高齢者の手術の増加や頭蓋底外科の発展に伴い脳静脈の重要性が見直されてきた.手術中の脳静脈損傷が重篤な静脈梗塞を起こすことがあり,また術中に静脈洞や架橋静脈を露出する頻度が増え,これを(意図的にあるいは意図せず)損傷する危険性が増してきた.実際には脳静脈は側副血行路のおかげで還流障害を呈することは少なく臨床的に問題となることは少ない.しかし,手術中に損傷された静脈が一定領域の静脈還流に重要な血管(active venous drainage)であったり,静脈損傷後に長時間にわたる脳圧排が加わった場合や脳腫脹の強い急性期の手術などさまざまな因子が加わって重篤な合併症を起こし得る(Fig.1)8,15,21,26,27).
本稿では,術後に起こる脳静脈還流障害の病態に関しての基礎的・臨床的検討および実際の臨床で脳静脈梗塞を防ぐための工夫について紹介する.
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