扉
上手な手術—うまい手術と良い手術
坪川 孝志
1
1日本大学脳神経外科
pp.797-798
発行日 1989年9月10日
Published Date 1989/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436202876
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ある脳神経外科教室の教授選考に際して,従来よりの研究業績と推薦状の他に,最近の主要手術の一覧表を提出するように求められているのをみた.確かに脳神経外科の教授はその施設での診療・研究・教育の三つの面で指導すべき責任があり,とくに治療の面では手術が上手でなければ,その施設での治療成績の向上は望むべくもない.治療成績の向上のないところに,斬新な研究や優れた教育など期待することは土台無理な話である.この大学では,手術症例を提示させることで,上手な手術のできる脳神経外科医を求めるための一つの評価法としようとしたに違いない.確かに提出しないよりは,目安をうるには優れた方法ともいえる.
しかし,手術症例の一覧表を選考委員の先生方がチェックして,どのような症例を,どれ程の症例に手術の機会があったかを知るにとどまり,選考委員の先生方が期待している上手な手術ができる脳神経外科医を選び出すことは困難であるばかりか,上手な手術という概念すら歪めかねないおそれさえ感じられる.
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