扉
手術の上手下手
千ケ崎 裕夫
1
1防衛医科大学脳神経外科
pp.697-698
発行日 1977年6月10日
Published Date 1977/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436200651
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脳神経外科の手術は多数の人々の協力によって進行するのは当然であるが,ある段階にまで至ると,たとえば開頭術の際は硬膜を切開し脳実質の操作に至った時は,重要な手術操作が術者一人の手で大部分が行われる場合が多い.この意味で術者は孤独である.彼自身の判断,手術操作が全手術の可否を決定するような感じをあたえる.したがって以前は脳外科手術の成功の鍵は術者一人の能力に左右されることが多く,おのずからいわゆる名人という人が世評にのぼり,そのような入の技術は一種の芸術のようなもので,他人に伝授することは不可能のように思われてきた.
しかし医療の問題で特別の人だけしか成功しないような手術法は本当は科学的学問の対象とならない邪道であり捨てさらなければいけない.今日は脳外科手術でこのような一般に普遍性のない手術は1つもないといってよい.問題はいかにしてこのような高度な技術を必要とする手術手技を修得していくか,教育していくかというtraining systemの確立にある.
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