Editorial
「Above all, do no harm?(まず,害を与えないこと?)」
矢吹 拓
1
1独立行政法人国立病院機構 栃木医療センター
pp.363
発行日 2013年5月15日
Published Date 2013/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102830
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「Above all, do no harm?」は,自分が医師として働く中,何度となく耳にした言葉である.有名な “医聖”ヒポクラテスの誓いの一節であり,医師が基本とすべき事柄の一つとされている.近年この言葉が,「ヒポクラテスの誓いではないのでは?」と指摘され,物議を醸している1).もともとのヒポクラテスの誓いには含まれておらず,後年歪曲されて付け加えられたものではないか,というのである.
真偽のほどは定かではないが,正直この「do no harm」は自分にとっては重いなあと思っていた.大なり小なり人間はミスをするし,それは医療関係者でも同様である.もちろん,医療関係者の失敗は患者さんの不幸に直結する可能性があるため,「ミスはするんですよ」と開き直る訳にはいかないが,誤解を恐れずに言えば,自分にも「ああ,失敗した…」とか,「危なかった…」といった経験は多々あるというのも事実である.多くの医療機関で,インシデントレポートの提出を義務づけたりしているのも,「失敗しない」ことが前提ではなく,「失敗する」ことが前提で,失敗にどう対処するか,どう再発予防をするか,が大事だからであろう.
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