扉
ロマンチック街道にて想うこと
松井 将
1
1昭和大学脳神経外科
pp.927
発行日 1987年9月10日
Published Date 1987/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436202460
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ご承知のように"ドイツ・ロマンチック街道"は余りにも有名であり,日本からも毎年数多くの人々が聖地を巡礼するかのごとく訪れ,絶えることをしらない.この街道の起点は守護聖人キリアンに守られて静かにマイン河の清流に臨むウィルツブルグに始まる.市の中央には雅やかな階段状のロココ風庭園を配した壮麗な司教の館がある.聖キリアンを含む12聖人の像に見守られながら旧マイン橋を渡ると,前方の丘の上にはフランケンの赤土の城壁にしっかりと擁護された城砦マリエンベルグの雄姿を仰ぎ見る.城砦の中庭には遠く1582年に設立されたウィルッブルグ大学の基石碑が保存されている.
われわれ医学関係者には忘れることのできないシーボルトはこの大学で医学を学んでおり,レントゲンは1895年,同大学でX線を発見している.また郊外のヴァイトヘッヒハイムには神経病理学の大家スパッツ教授の第一弟子で下垂体系の権威者エンゲルハルト教授がおられ,東方からの学友も隣人として温かく迎えてくれる.この街道の南端はヨーロッパ・アルプスの峰々を背景に豊かな森と湖に囲まれて佇ずむフユッセンである.全長およそ350キロに及ぶ街道はその名に応しく中世絵巻物から繰り広げられたような古色と優雅さを保ち続けてきた町々村々が珠数の玉のように相ついで連なっている.
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