扉
déjà vu『噫 医弊』
朝長 正道
1
1福岡大学,脳神経外科
pp.815
発行日 1985年8月10日
Published Date 1985/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436202051
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先頃,旧医家の古い蔵書をほこりをはたきながら引っくり返したことがあります.幕末の漢方医学,オランダ医学など筆写したものや,明治,大正,昭和初期のものなど1冊1冊手に取って見ていると時間がたつのも忘れてしまいます.先人がおそらく薄暗いランプの光で一生懸命筆写したであろう和とじの本も,また木版の漢方医学の本も,何について書いてあるということはわかりますが私には大変難解でした.しかし,明治,大正の読みものは難しい漢字や言い回しが出てきますが,まだまだよく理解できます.
煙雨楼主人著『噫 医弊』明治41年初版の翻刻版と青風白雨楼主人著『今のお医者』大正2年初版本が私の手元にあります.煙雨楼主人は長尾折三という医師であり,青風白雨楼主人もその内容から察するにやはり医師であろうと思われます.『噫医弊』の「第四章 吾人の医学と医学者に対する希望」には15項目が列記してあり,その1つ1つがまったく今もその通りであることには驚かざるを得ません.第一番には『医学は神聖也.神聖なる医学,非神聖の人に依て講究せらるるとせば,医学若し霊あらば磅礴の間に悲鳴を揚げて慟哭せん』と書いてあります.
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