扉
手術の絵
最上 平太郎
1
1大阪大学脳神経外科
pp.1337
発行日 1984年11月10日
Published Date 1984/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436201932
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私は絵が好きだが,どちらかというと印象派よりはバロックからロマン派,古典派といった方が好みに合っている.というのもフランドル派の巨匠ルーベンスの絵に強く魅せられたからでもある.国際学会などで海外出張したりする際など暇をみては当地の美術館を見学することにしている.ルーブル美術館ではルーベンスのマリー・ド・メディシスの生涯についての連作を一堂に展観した部屋に入ったときは実に驚嘆した.彼の絵はスケールが壮大で多数の人物がdynamicな動きを見せる,まさに絢爛豪華そのものといってよく,当時最大の巨匠という名声を博したことももっともなことと思う.彼はまた外交官にも任ぜられ,非常に裕福な恵まれた一生を送ったが,その人の気性とか環境といったものが自らその絵にあらわれている.
これに対比するには甚だ的外れではあるが,同時代の巨匠レンブラントの絵から受ける感じは,どちらかというと静かで,深い情感をたたえている.しかし私にはどこか一種の哀愁を秘めているように感ずる.彼が晩年不遇な一生を終えたことを考えると,その境遇に影響された一面が出ているのかもしれない.
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