Medical Essay メスと絵筆とカンバスと・10
手術室の絵
若林 利重
1
1東京警察病院
pp.1310-1311
発行日 1993年10月20日
Published Date 1993/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407901269
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レンブラントの「デュプレ博士の解剖講義」(1632年)という絵はあまりにも有名である.屍体も,解剖をしている博士にも,それをみている学生たちにも,それぞれの表情が実によく出ている.また供覧されている腕の解剖もきわめて正確である.さらに絵のバックは闇のように暗くてその場の雰囲気が生々と迫ってくる.まさに名作中の名作だと思う.この絵はもう何10年も前から折りにふれて私の目の前に現われてくる.
日本の画家の油絵で,手術室内の群像を画いたり,執刀者を肖像的手法で画いたものはあまり多くない.これらの絵をみると技術的には優れたものであっても臨場感や迫真力に欠けているように私には思える.極端ないい方をすれば「佛作って魂入れず」の感がある.それは手術室のなかで長年生活をしているものからみれば当然であろう.手術室には一般の人にはわからない緊張感が漲っている.それが絵ににじみ出てくるとよいと思う.
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