扉
仏性or物性,Shuntの夜の夢
松角 康彦
1
1熊本大学医学部脳神経外科
pp.1337-1338
発行日 1981年11月10日
Published Date 1981/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436201422
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いわゆる正常圧水頭症の診断のもとに,シャント手術を施行した患者が示す知能回復の過程をみて,素朴な驚きを経験していない人はあるまい,とりわけ手術適応に十分な得心がゆかず,半信半疑の手術であった場合などには,予想に反した素晴らしい経過を示した症例をみると,一体どうなっているのだろうかと感嘆久しくせざるを得ずということになる.もちろんCT cisternographyやpressure monitoringなど最近の進んだ検査法と,その所見の解読により,まぐれ当りのような成績ではなく,かなりの確実さを持って適応を決定することができるようになったのだが,それでも一夜にして患者が正気をとり戻す有様には,これを頭蓋内圧亢進を伴う閉塞性水頭症と同列にみなして,間歇的慢性圧亢進症状の解除による単純明快な現象とはちょっととらえ難いような何物かがあるように思われる.シャント手術によりもたらされた圧の低下は,あくまでひとつの方便であって,脳組織はどのように対応しているのだろうかと,しばしば空想に耽ることも一再ならずである.
圧亢進の著しい水頭症の知能低下は,むしろその基盤に意識障害を持ち,いわゆる正常圧水頭症が示す痴呆の様相を示さないし,いわゆる正常圧水頭症ではむしろ大脳の持つ道具的機能の凹凸不均等な障害が目立つ.あまり注目されていない症状も数少なくないし,特にParkinsonismと誤診されるような例は極めて特徴的であろう.
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