視座
将来の整形外科医への期待
杉岡 洋一
1
1九州大学
pp.113-114
発行日 1999年2月25日
Published Date 1999/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408902628
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過去の整形外科基礎学術集会におけるシンポジウムで,某大内科の方が発表の冒頭「整形外科医は大工と思っていたが,この学会に出席して割とましな事をやっているじゃないかと思った」といった類のことを申された.座長を務めていた私の脳裏をいくつかの想いがかすめた.
整形外科医は直接患部に手を加え,損傷部の復元や機能再建に当たるので,そこには芸術といっても良い術者の腕にその成否,出来栄えが懸かっている.これは内科医に味あうことの出来ない創造の喜びである.常により良い術式を求め工夫する楽しさと,生体の見事な適合力に惚れぼれとする,いやむしろ,その生体の妙を引き出す正確で力学を含め理屈に合った手術をする点では,死んだ材料を対象とする大工さんには得がたい特権である.骨切り術を例にとれば,綿密な計画と設計図をもとに,最も適した内固定材を駆使して術者の三次元思考を組み立ててゆく過程は大工仕事に似ているが,対象が生体である処に大きな差がある.その点,人工関節置換術は生体の方を合わせようとする,例えば人工股関節のステムに合わせて骨を削るロボットの試みなど,本末転倒で生体を考慮しない工学系の思考と思われ,生体の適合力が生かせない点で面白味がない.大腿骨中枢端の形態も力学的要請に基づき改変された結果であり,ステムを支えるように出来たものではない.元来の骨頭を支える上での骨幹端,骨幹と解釈すれば,当然表層置換型が理想的で今後の再挑戦に期待したい.
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