Japanese
English
診断セミナー
失行症
Apraxia
岩田 誠
1
Makoto IWATA
1
1東京大学脳研究施設神経内科
1Department of Neurology, Institute of Brain Rescarch, Faculty of Medicine, University of Tokyo
キーワード:
Apraxia
,
Neuropsychology
,
Higher cortical function
Keyword:
Apraxia
,
Neuropsychology
,
Higher cortical function
pp.125-133
発行日 1976年2月10日
Published Date 1976/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436200407
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
Ⅰ.行為(praxies)とは何か1,2)
"行為(praxies)"は,反射のごとく生来備わったものではなく,獲得されていくものである.Piagetによれば,単なる反射の段階から,獲得性の"行為"への進化は,外来の事物を,既存の反射的な運動系の中にとりこむこと(同化:assimilation)1,2)によって始まる.例えばsucking reflexは生来性の反射であるが,たまたま自分の母指が口のそばにいった時,それをくわえて吸う,ということが行われるとき,sucking reflexという生来性の運動系に,自分の母指という物体が同化され,1つの行為が成立すると考えるのである.この段階では,未だ行為の意図はなく,偶然性の支配が大きい.しかし,外界の事物が,既存の反応シェーマの中にくみいれられる(同化)ことによって,結果的に反応シェーマの可能性が拡げられてくる.このようにして改良されてきた反応のシェーマを,今度は新しい事物に対してあてはめていくこと(調節:accommodation)1,2)により,行為に1つの目的が生れ,意図的な行為が可能となる.例えば,目にみえるものを手でつかむような行為は,外界の事物に対する意図的な調節として理解されるのである.
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.