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境界領域
腫瘍免疫研究の問題点—腫瘍抗原と免疫監視機構・1
Tumor Immunology: Tumor Antigen and Immunological Surveillance System
西岡 久寿弥
1,2
Kusuya NISHIOKA
1,2
1国立がんセンター研究所ウイルス部
2東京大学医科学研究所
1Virological Division of National Cancer Center Research Institution
キーワード:
Tumor antigen
,
Immunological surceillance system
Keyword:
Tumor antigen
,
Immunological surceillance system
pp.111-114
発行日 1973年8月10日
Published Date 1973/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436200077
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Ⅰ.がんへの免疫学的アプローチ
感染症の克服に免疫学が果たして来た役割は疾患の診断,治療,予防の各面において輝かしい成果をあげてきた.腫瘍に対して同じ原理の上に築き上げられた免疫学に同じ成果が期待できるであろうという楽天的な観測の上にたって,はげしい攻撃が行なわれていたが1950年までの研究は,実験動物に対する基礎的な検討,特に免疫遺伝学的な知見の不備が致命的な欠陥となり,正常移植抗原と癌細胞の特異抗原の識別を混乱させ,根底から初期の楽観論はくつがえされた.
その結果がんの研究はおもに形態学あるいは生化学のレベルにゆだねざるを得なかった.しかし当初の失敗にもかかわらず,がんの免疫学は移植免疫学の進歩により遺伝的に均一な正常移植抗原をもった動物をそろえることが可能になった免疫遺伝学の急激な進歩と,定量的な,また他の物理化学的な方法に比しはるかにすぐれた感度と特異性をそなえた免疫学的方法論の進歩によりここ20年間の間に完全に当初の期待にこたえる成果をあげるにいたった.
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