脳腫瘍の腫瘍特異抗原

Tumor Specific Antigens of Brain Tumors

I．緒言

　癌の免疫学的研究はすでに今世紀初め，Zensenがratの移植癌を用いて行なった実験に始まる27）．しかし初期の研究はいずれも組織適合性（histocompatibility）を無視したものであったため，1925-35年にかけてmouseの純系化が軌道にのるにつれ，癌に特異的な免疫反応の存在は懐疑的，否定的に考えられるようになった．

　しかし，ウイルス性の腫瘍やmethylcholanthrene；MCAその他の発癌剤による人工腫瘍の開発が一つのきっかけになって^Gross20）（1941），　Foley^12）（1953）に始まりPrehn et al．^48）（1957），Klein et al．^32，33）（1960），　Old et al．^45）（1962），　Smith^58）（1968），Fisher^11）（1971）らはMCAあるいはplastic filmなどによって誘発された腫瘍の特異抗原性を証明し，またSjögren et al．^56，57）（1961）らはPolyoma virusによって誘発された腫瘍での特異抗原を証明した．その後，各種ウイルス性腫瘍に特異抗原が証明され，各ウイルス群には群共通抗原のあることが明らかになった．

Recently there have been many reports suggesting the existence of specific tumor antigens in almost all cases of animal tumors which were either spontaneous or experimentally induced. With the development of modern immunological techniques, it has been shown that some of human neoplasms also have tumor specific antigens.