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2011年3月11日の東日本大震災から2年が経過したが,被災者支援や放射性廃棄物の中間処理施設用地の選定など,未だに国は混迷状態から抜け出していないようである.また,竹島や尖閣諸島の領有権をめぐる近隣国との対立がクローズアップされ,国内外情勢に国民の不安感はつのるばかりである.この中で,昨年開催されたロンドンオリンピックでは,卓球,サッカー,アーチェリー,重量挙げ,レスリング,柔道,フェンシング,水泳などの選手の活躍で,歴代最高のメダル数を獲得した.特に,団体競技の奮闘が目立ち,多くの方が寝不足になりながらも日本人としてのアイデンティティーを強く再認識し,そのチームワークのすばらしさに胸を躍らせたのではないだろうか.
いうまでもなく病院は,医師のほか,さまざまな専門技術者が集まって社会貢献を果たす施設であり,医療技術や設備の充実に加えてそのチームワークのよさが業務の遂行能力に強く影響を及ぼす.当初,英語圏では,医師・看護師以外の医療従事者を,パラメディカルスタッフ(paramedical staff)と総称し,国内でもその名称を用いていた歴史がある.その後,医療の高度化・複雑化に伴い,以前は医師のみが行っていた業務が細分化・分業化され,専門性の高いスタッフの協力が不可欠となった.そのため,接頭辞の“para-”は「補足する」「従属する」という意味であり,医療従事者間の主従関係を示唆することから,昭和後期には「協同」を意味する接頭辞の“co-”を用いた「コ・メディカル」(co-medical)との和製英語が発案された.さらに,2012年1月に日本癌治療学会は,「コ・メディカル」の使用をやめ,「薬剤師」「看護師」「検査技師」など,正式な個別名称を積極的に使用するよう提言した.「コ・メディカル」では,職種の範囲が不明で,未だ上下関係を暗示すること,喜劇(comedy)の形容詞(comedical)と誤解する可能性を挙げている.現代においては,すべての医療従事者は対等な立場であることを前提としたチーム医療の考え方が浸透してきており,医師・看護師を含めたすべての医療従事者をまとめて「メディカルスタッフ」と称する傾向にある.
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