扉
茶道と脳神経外科手術
難波 宏樹
1
Hiroki NANBA
1
1浜松医科大学脳神経外科
pp.945-946
発行日 2008年11月10日
Published Date 2008/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436100829
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浜松医科大学に赴任して間もなくこの「扉」に寄稿させていただいたが,この度8年ぶりに再度寄稿する機会をいただいた.この8年間の医療界の移り変わりには驚かされるばかりであるが,新臨床研修制度や医師不足,それに伴う地域医療の崩壊については皆様がさまざまな視点から議論され,いろいろなアイデアがこの「扉」の中でも紹介されてきた.今回,そのような現実の世界からは少し離れ,表題のような「随筆」を書かせていただこうと思う.
茶道の稽古を始めてから17年ほどになる.浜松に来てからは,余裕がなくあまり炉に向かう機会がないのが残念である.30代も後半になり,仕事や人生について漠然とした迷いがあったころ,妙に日本的なものに惹かれ,なんとなく始めたのが発端であった.最初はただひたすら理由もわからず覚えることが多く,何度もくじけそうになった.やがてひとつひとつの所作の意味が少しずつ感じられるようになると,「もっと知りたい,もっとできるようになりたい」という気持ちになり,一時はかなり「はまって」いた.たとえば,手術中になんとなくガーゼを茶巾のようにたたんでみたり….私が師事していた師範は,ただ単に点前を教えるのみでなく,稽古の一環として弟子たちが亭主と客の役をする茶会を1年に何回か開く,実践を重視する先生であった.初釜,夏の朝茶,炉開き,晩秋の夜咄など季節を感じるのも茶会の楽しみであった.
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