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Ⅰ.はじめに
日々変化する医療環境のなかで,他国のシステムをどのように取り入れながら,日本の医療,とりわけ脳神経外科診療システムを構築していくかが,今後の課題である.そのために「日本と米国の脳神経外科診療の違い」を知ることは現状を再評価し将来を考える手がかりとなり得る.米国の医療費請求・支払い制度はホスピタルフィーとドクターフィーの二本立てであり,医療費は日本のように「公定価格,全国統一価格」ではなく「一物多価」である.歴史的には長い間同じ手術でも外科医により設定料金が異なり,また地域によって2~3倍の差 があり,しかも保険会社によって請求・支払い方式や料金が異なっていた.現在もこの傾向に変わりはないが,公的高齢者保険であるメディケアに全国一律の診療報酬が採用されることになり,1983年からホスピタルフィーに包括支払い方式DRG/PPS(diagnosis related group/prospective payment system)が導入され,1992年からドクターフィーに包括支払い方式RBRVS(resources based relative value scale)が導入された.日本では常識であるが,米国ではすべての医師に全国統一の診療報酬を採用することは一つの革命であった.ドクターフィーの点数計算方式には地域格差,医療過誤保険料などの係数が加味されている点が興味深い.しかし,実際の米国の病院では,いまだに提示価格(charge)と呼ばれる独自の診療価格が設定されており,病院間による提示価格の開きが大きく,病院と保険会社,患者との間で値引き交渉が行われている.米国の医療は様々な契約によって成り立っており,日本との大きな違いをみることができる.
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