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1.はじめに
平成15年度に急性期の入院包括評価としてDPCが初めて特定機能病院に導入され,平成16年度はその見直しがなされた.さらに平成16年度社会保険診療報酬の基本方針には,医療の質の向上を目的としたDPCへの重点評価が盛り込まれている.昨今の経済情勢や医療の質の向上を目指して,包括評価払い方式DPCへの期待は大きく,今後は特定の医療機関だけなく幅広く一般病院にも導入されていくであろう.既に平成16年度からは特定機能病院だけでなく,手上げ方式によりDPC調査協力医療機関として一般病院にその導入が始まっている.このような状況のなかでDPC対象医療機関の保険請求は今までと比較してどのように変わるのだろうか.
筆者はこれまで,平成15年度版DPCにおける脳神経外科領域の診断群や平成16年度改定について概要を述べてきた.制度内容や導入後の改定内容についてはある程度ご理解いただけたと思うが,医療機関にとって経営管理上,最も重要となる診療報酬請求における審査支払いならびに医療指導監査はどう変わるのかはまだ不透明である.事務手続の上で診療報酬を請求するのはそれほど難しいことではないが,その適否や審査・医療指導監査はどのような方向になるのかは皆目検討もつかないのではなかろうか.
DPC導入に先立ち,旧厚生省は国立病院を中心に平成10年より日本版DRG/PPS(Diagnosis Related Group/ Prospective Payment System)の試行を行ってきた.試行医療機関では,コーディングミスが意外に多いことや医療内容の評価が不十分であるなどの問題点が噴出しており,結果的に不適切な診療報酬が生じてしまう可能性がある.その中で保険医療行政は,DPCの目標として掲げる「医療の質の確保」と「適正な診療報酬請求」がなされるように,問題点の整理とその解決策を検討している.
本報では実際の審査支払いや医療指導監査での留意点について解説する.DPCの診療報酬請求において適正な請求をするためにはどのように考えて行くべきかを概説したい.なお審査支払いについては,後述する米国における中間支払機関や同僚審査委員会のような審査機構やシステムがまだ十分に確立されていないため,具体的な記述が困難である.このため審査支払い・医療指導監査を含めた大枠の方向性について述べたいと思う.
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