扉
リスクマネジメント
田渕和雄
1
Kazuo TABUCHI
1
1佐賀大学医学部脳神経外科
pp.447-448
発行日 2004年5月1日
Published Date 2004/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436100380
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- 文献概要
最近,ほとんど毎日のように全国各地で医療事故や医療訴訟の報道が流れていますが,それらの中でいったいどれだけが事故の背後にある諸々の要因と事故との因果関係について正確に伝えているでしょうか.われわれ脳神経外科医にとっても医療事故はいつ誰の身に起きてもおかしくない出来事ですが,どのような医療事故であれ,それが何故起こるのか,どうすれば防げるのかの検証の視点を欠いた報道には,医療従事者の多くが物足りなさを通り越して,強い不満を感じているのではないでしょうか.医療事故が明らかになった場合,それに直接関係した当事者の責任を追及することのみにとどまることなく,しかるべき必然性をもって生じたであろうその事故の背後にある組織や体制の問題点を見つけ出し,改善策を練り,同じような事故が再び起こらないように務めることも重要だと考えます.取り返しのつかない悲惨な医療事故はあってはならないことであり,それを皆無にはできないまでも,限りなくゼロに近づけるためには,いろいろな立場の人たちが知恵を出し合うなど,事故の防止に向けた地道な努力が必要なことは言うまでもありません.
昨年末,毎日新聞医療問題取材班によって企画,編集された『医療事故がとまらない』という書名の新書(集英社)を読まれた方も少なくないと思います.
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