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Ⅰ.は じ め に
頭蓋欠損に対する頭蓋骨形成術の歴史は古く,最古の脳外科手術の1つである2).さまざま材料がimplantとして用いられてきたが,重要なポイントとしては,①十分な強度があること,②整形が容易であること,③長期間安定であること,④感染に強いこと,⑤炎症反応が低いこと,⑥発ガン性がないこと,⑦画像診断時のアーチファクトがでにくいこと,などが挙げられる3).②にも関係するが,美容上の問題も重要であり,特に顔面にかかる前頭部における頭蓋形成は,患者の手術の満足度,術後のQOLに大きく影響すると考えられる.Implantの材料としては,古くは金属が用いられていたが,近年は非金属のhydroxyapatite,siliconeが使用されている.欠点としては第一に整形が非常に困難であること挙げられる3).一方,1945年に導入されたmethylmethacrylateは本邦でも汎用されている7).硬化の初期段階では可鍛性であり,どのような形の欠損にも対応できる点12),金属のimplantと異なりCTやMRIなどの画像診断の妨げにならないことが長所である6).しかしながら頭蓋骨の形状は想像以上に複雑であり,methylmethacrylateでも正確に復元することはしばしば困難である.またmethylmethacrylateは重合時に熱を発生し周囲組織に障害を及ぼすことから,冷たい生理食塩水などを用い冷却する必要性がある8).
近年はこれらの欠点を補うべく,CT画像に基づきコンピューター計測されたセラミックス製人工頭蓋が使用可能となっている10).しかしながら頭蓋骨腫瘍の手術では,二期的な手術が必要になること,また高価であるためにルーチンに使用されるには至っていない.
そこでわれわれはmethylmethacrylateを用いた方法の問題点を解決するために,鋳型を骨セメントで形成し,それを基に人工頭蓋を形成することを考案した.この方法は,①極めて安価で簡便である点,②形状も正確であることから美容上問題ない点,③頭蓋骨とチタンプレートで固定できることから十分な強度が得られる点より,十分満足できる方法である.本稿では実際の症例を供覧しわれわれの工夫を紹介する.
Cranioplasty using methylmethacrylate is a common method in patients with cranial defects. However,it is often difficult to precisely restore a removed cranium. The authors developed a new technique of cranioplasty.
In the present study,we first made a cast composed of methylmethacrylate using a bone flap. We then covered the cast with a sheet of wet gauze. The implant was made by applying methylmethacrylate cement onto the gauze. The implant is firmly fixed to the cranium with titanium plates.
Five cranioplasties were perfomed using this new technique. All patients achieved excellent cosmetic results with no complications. This technique enables low-cost,easy and cosmetically successful cranioplastic surgery.
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