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Ⅰ.は じ め に
3番から12番までの脳神経は,脳幹を出て骨孔に至るまでの間に,脳幹周囲のくも膜下腔,脳槽を通過する.Chiasmatic cistern,carotid cistern,interpeduncular cistern,ambient cistern,trigeminal cistern, pontine cistern, cerebellopontine cisternなどである(Fig. 1).中頭蓋窩内側,テント切痕に沿っての手術,錐体骨先端部から斜台にかけての手術,小脳橋角部から大後頭孔にかけての手術では,これらの脳槽を露出して,内部を走行する脳神経の温存を図ることが,病変の処理とともに主要な目標になる.
実際の手術では,これらの脳神経の通り道を一繋がりの「corridor(回廊)」として意識するとよい(Fig. 2).これを術野に展開するために,最も一般的に行われている方法は,presigmoid approach(posterior petrosal approach)である1).この術式は,中頭蓋窩から後頭蓋窩にかけて開頭し,中頭蓋底から錐体骨上面,そして錐体骨後面を露出する.次いで中頭蓋底に沿って硬膜を切開し,錐体骨の後端に至ったところで,尾側へ約90度転じ,上錐体静脈洞を切断し,S状静脈洞の前方で錐体骨後面に沿って,硬膜切開を後頭蓋窩へと伸ばす.側頭葉下面を頭側へ圧排すると,上錐体静脈洞の切断部でテントが確認されるので,これを切り,中頭蓋窩と後頭蓋窩を同一術野内に展開する.Presigmoid approachは側方からのアプローチであり(Fig. 3),「corridor」が術野の奥に,横たわるように露出されるため,これに対して常に直角に,同じ深度で手術操作を続けることができる.テント切痕周辺の病変,錐体骨斜台部病変に対して,汎用性が高い優れたアプローチである.反面,開頭は大きくなり複雑である.またS状静脈洞を露出して,その前方の硬膜に切り込まなくてはいけないこと,側頭葉を上方へ圧排するためLabbé静脈に張力がかかりやすいことなどにより,静脈系の合併症に注意を払う必要がある.
「脳神経のcorridor」を露出する方法は,他にどのようなものがあるのだろうか.1つは,中頭蓋窩の前外方から斜め後内方へアプローチするanterior petrosal approachである(Fig. 3)5,6).この方法は,基本的には硬膜外のアプローチであり,錐体骨先端部のKawase's triangleを削除し,テントを切って後頭蓋窩に至る.開頭は単純であり,側頭葉の前半部から進入するため,圧排も無理なく行うことができる.静脈系の合併症も少ない.症例を選べば,侵襲が少ない安全な方法である.病変の主体が中頭蓋窩の内側にあるもの,特に腫瘍の本体が硬膜外にあるMeckel腔発生の三叉神経鞘腫は,最もよい適応となる.
もう1つの方法は,後頭蓋窩側の後外側から前内側上方に向かって「corridor」を露出する方法である2,10-12).「corridor」に沿って後ろから前に進んで行く形になる.小脳の上面に側方からアプローチするため,lateral supracerebellar approachとよばれている7).テントを切って(transtentorial)中頭蓋窩に到達することも可能である.以下にその詳細を述べる.
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