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Ⅰ.は じ め に
眼窩病変では,眼窩のどこにどのような病変があるのか,それに加えて術者の経験に従ってどのアプローチを選ぶかを判断することになる.その手術アプローチをまとめるとFig. 1のようになる.このなかで,頻度が高いのは眼窩外側からのアプローチ(lateral orbitotomy)と経頭蓋的アプローチ(transcranial approach)である.通常,lateral orbitotomyとanterior orbitotomyは眼科医により行われ,inferior orbital approach(caudal approach)は稀に耳鼻科医と眼科医により行われる.吉本は本誌第16巻1号に外側からのorbitotomyの手技についても詳細な解説を行っているが12),われわれの施設で脳神経外科医が登場するのは経頭蓋的にアプローチする場合のみである.文献を調べると,このような眼窩に対する最初の経頭蓋的アプローチは今から80年以上も前にDandyが報告している4).以後,筆者らも含めて8,9),さまざまなアプローチが述べられてきた.初期の論文では主にどのようにして骨組織を開けて眼窩へ至るかについての議論になっているが1,3,5),microsurgeryが一般的となってからは眼窩内へのアプローチも詳細に述べられている2,6,7,11).筆者らは,20症例に対してここで述べる同一の手技を用い眼窩上壁を開放して眼窩内にアプローチし,眼窩内腫瘍を摘出してきたので,本稿ではその手技と手術成績について解説を行うことにする.
腫瘍の直径は2~3cm程度だが,ここで述べる経頭蓋アプローチでは,皮膚切開が長く眼窩から前頭骨の開頭が複雑である.眼窩腫瘍に対する手術の第一の目的は安全に腫瘍を全摘出することであるが,その際に視力を回復または温存して両眼視機能を保ち,かつコスメティックな問題も一気に解決しなければならない.そう考えるとやはり本法は不可欠なアプローチであると言わざるをえない.ここに提示した症例は,すべて脳神経外科医と眼科医の合同手術で行った症例である.まず,眼窩の上壁の開放までは脳神経外科医が担当し,眼窩内操作は眼科医と脳神経外科医で行う.そしてその後の頭蓋および眼窩の形成と閉創は,脳神経外科医が担当している.
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