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Ⅰ.はじめに
眼窩および眼窩内を形成する解剖学的構造物は多様性をもっており,結果として生じてくる眼窩内腫瘍性病変は,良性・悪性含め,非常に多彩である.眼窩内腫瘍に対する手術戦略を立てる際には,手術によって視力・視野・眼球運動・涙腺機能など患者のADL(activities of daily living)に直接関係する症状が悪化する可能性を考慮しなければならない.実際に手術を遂行する際のポイントとして,①単独で全摘出を目指すのか,adjuvant therapyも考慮に入れた上で全摘出を目指すのか,減圧を目的とするのか,確定診断を目的とした生検にとどめるのかという手術摘出度,②病変の存在部位,手術侵襲度,コスメティックな観点から総合的に選択されるべき手術アプローチ,③摘出後必要となる再建方法,の3点が挙げられる.
眼窩病変は,脳神経外科医だけではなく,眼科医,形成外科医,耳鼻咽喉科医など,他科による執刀も行われる部位であり,合同手術が必要となることもある.脳神経外科が単独で手術を行う際の手術アプローチとして,これまでさまざまな変法も報告されてはいるが,大きく分けると経頭蓋アプローチと側方アプローチの2つに集約できる.さらに眼窩外に連続性をもつ腫瘍性病変の場合は,頭蓋底外科手技の導入も必要である.重要なことは,病変の最大限の摘出を行うとともにADL維持・機能温存,コスメティックな問題の解決を一期的に解決することであり,このためには眼窩周辺の複雑な骨構造はもとより,特に眼窩内外の脈管・神経,腺組織などの重要解剖構造物の知識を十分に理解しておくことが必須となる.
今回われわれは,眼窩内腫瘍の自験例66例をretrospectiveに検討し,手術アプローチの選択,手術摘出度,合併症について考察するとともに,眼窩外科解剖について検討した.
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