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貴誌(No Shinkei Geka 32:723-728, 2004)に掲載されました山滝 昭先生らのcase reportを大変興味深く読ませていただきました.解離性椎骨動脈瘤急性期の治療法の困難さを再認識させられた次第であります.山滝氏らは,この論文において,虚血発症例に対する抗凝固療法の問題点を指摘され,さらに既に閉塞している解離性病変であっても急性期に手術を含めた十分な治療の検討が必要ではなかろうかと提言しておられます.われわれも,同様の考えを持っております.完全閉塞例であっても急性期に手術を含めた十分な治療の検討の必要性があるのではなかろうかと考えるに至った症例を2例経験しており,いずれの症例も論文の形で報告しております1,2).参考になればと,このたび「読者からの手紙」に投稿させていただきました.
2例とも出血例で,いずれも発症時に患側椎骨動脈は完全に閉塞しておりました.1990年に1例目を経験いたしました.この時には,山滝氏らも考察で触れられておられますように,解離壁の急性期のダイナミックな変化により,再開通・再破裂もあり得ると考え,ややoverindication のきらいもありましたが,急性期にproximal occlusionを行いました.患者さんはわずかな嗄声を残すのみで,退院いたしました1).その後,2004年に同様の閉塞例を経験いたしましたが,この例では血圧管理のみの保存的治療としました.順調に回復し3日目にはほぼ完全に回復しておりました.しかし,4日目に食事中に突然,頭痛を訴えてcomaとなりました.血管撮影を行いますと閉塞していた患側椎骨動脈は再開通しており動脈瘤が造影されておりました.緊急で動脈瘤のtrappingを施行し,Terson症候群の合併はありましたが,幸い完全に回復しました.この例の経験から,1990年に閉塞例に対して行った手術は,必ずしもoverindicationとは言えなかったのではないかと考えております.
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