特集 脳のシンポジウム
主題:生体の情報処理
結語—神経系における情報処理
内薗 耕二
pp.574
発行日 1967年10月25日
Published Date 1967/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431906424
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生理学者によつて使われていた感覚または知覚という言葉が情報また情報処理という言葉と同義あるいは同義的に使われ始めてからすでに長い日月が経過した。人間は本来進歩を求め新しいことを知りたがる心性をもつている。言葉が厳密な定義なしに使われてしまつているようなきらいがないではないけれども,情報または情報処理という言葉のもつ広い現代の社会性ともマッチして,新しい情報科学の中に感覚生理学が包括されるような環境が生れたことは,学問の一つの進歩の方向を示すものとも見られよう。
生理学,心理学,社会学はもちろんのこと,工学とくに人間工学における"情報"のもつ意味はとくに重大であろう。もつとも素朴な意味における情報が生理学における感覚であり,世間一般でもつとも気安く使われる情報は,きわめて複雑な意味をもつているといわなければならない。情報科学の根底はもつとも素朴な感覚生理学であろうとおもわれるけれども,生物の感覚に関する知識がじゆうぶんに開発されないうちに、他の分野の情報科学がこれをおきざりにしてどんどん進歩していつているのが現状のようにおもわれる。
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