Japanese
English
特集 脳とホルモン
序論
Introduction.
新井 康允
1
Yasumasa ARAI
1
1順天堂大学第二解剖学教室
1Department of Anatomy, Juntendo University School of Medicine
pp.5
発行日 1989年2月10日
Published Date 1989/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431906256
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脳—下垂体—標的内分泌器官—末梢ホルモンという階層支配的な解析と,末梢ホルモンの標的としての脳自身の反応性が,神経内分泌学の従来からの研究テーマであった。しかし,脳がホルモンを分泌する内分泌器官の一つであり,そのホルモンが末梢のみでなく,脳自身へも作用することが明らかになり,最近発見されつつある多くの神経ペプチドが,ある場合にはホルモンとして,ある場合には局所ホルモンとして,ある場合には神経伝達物質あるいは修飾物質として働くというように,これらの物質が脳内でいろいろなタイプの情報伝達に関与していることが判明した。
系統発生的にみると,シナプスを介する神経回路による情報伝達機構よりも分泌機能による情報伝達のほうが古く,その意味で,脳ホルモンや神経ペプチドの研究は神経科学の中で比較的新しい研究分野であるにもかかわらず,脳機能の最も基本的な,系統発生的には古い部分にかかわっているといえる。実際,原生動物で,ソマトスタチンやβ-エンドルフィン,ACTH,バソプレシンなどが作られているという報告がある。それが動物の進化の過程でどのように進化してきたかは,生体内情報伝達機構を考えるうえに非常に興味ある問題を提供してくれるだろう。
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