Japanese
English
特集 Neurotransmitter—新しい展望
Alzheimer病と神経伝達物質
Neurotransmitters in Alzheimer's disease.
飯塚 礼二
1
Reiji IIZUKA
1
1順天堂大学医学部精神神経科
1Department of Neuropsychiatry, Juntendo University, School of Medicine
pp.697-710
発行日 1986年8月10日
Published Date 1986/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431905818
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I.はじめに
Alzheimer病(Alzheimer type of dementia:ATD,以下この論文ではとくに断らない場合にはこの表現で従来の老年痴呆senile dementiaをも含めて用いる)研究にさいして,神経原線維変化や老人斑の研究と並んで神経伝達物質,ないしその候補とされている多くの物質の研究が重要な課題のひとつとなっている。ATDのさい,神経細胞胞体および神経網の示す異常については古くからの多くの業績があり,また近年新しい力法論を用いての進歩が著しい。
ATDが痴呆を中心とする精神症状によって特徴づけられる疾患であり,また神経細胞胞体や神経網に明らかな異常がある以上,ニューロン間の情報伝達にも当然何らかの障害,ないしは異常が存在するはずで,これは神経伝達物質の変化としてもとらえうる可能性があると考えられるようになった。とくに軸索尖端部では,より早期に機能や形態の異常が明瞭に現われるという神経変性疾患特有の原則を考えれば,神経伝達物質の異常は神経細胞胞体の異常にさきがけて出現する可能性がある。また,仮に神経伝達物質のうちで,あるものに他とは異なった変化がみられることがあれば,ATDを特殊な神経伝達系の疾患として位置づけうる可能性が生まれることにもなる。
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