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I.はじめに
痛みや音刺激あるいは情動興奮によって瞳孔が散大するが,文献によるとこのような散瞳を最初に記述したのはFontana(1765)1)といわれている。彼は眠っているヒトを突然覚醒させると,明るい照明下であっても縮小していた瞳孔が大きく散大することを発見している。またネコを驚かせたり,痛みを与えるとやはり散瞳が起こり,平静になるまで散瞳が続くと述べている。中国の商人はヒスイを売る場合,買手の目を注目し散瞳がみられたら,客が手にしている商品に関心が深いことを察知して,高い値をつけるという話もあり,案外このような情動興奮による散瞳は,民間では古くより知られていた事実なのかもしれない。
1852年にはBudge2)が疼痛や驚愕,とくに顔面,頸などをつまむと,容易に両眼がすばやく(0.1〜0.3秒の潜時)散瞳(1〜2mm)することを記載している。またWcstphal(1863)3)は,クロロホルム麻酔中の人の耳元で叫び声を発したり,鼻粘膜を刺激すると散瞳反応が出現することを発見している。シカゴ大学のHess4)は,かつてScientific Americanに被験者にヌード写真を見せると散瞳が観察されるが,不快感,嫌悪感を起こさせる写真ではむしろ縮瞳すると発表している。この論文が発端となって瞳孔学の権威であるLoewenfeld女史とHessとの間に議論がもちあがったことをご記憶の方もあろう。
Abstract
It has long been known that the pupil will dilate in response to psychic and sensory stimuli. Fear, excitement, and rage all cause pupillary dilation. Stimulation of sensory nerves similarly causes pupillary dilation. The center and efferent pathway for these two different kinds of stimuli are considered identical. Hence the phenomenon is known as the psychosensory reflex, and is called reflex dilatation of the pupil.
The author at first succinctly reviewed the history of works on reflex dilatation of the pupil.
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