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はじめに
「激痛は抜歯部から起こり上顎を通り顔面全体に拡がり,消えたと思うとまた起こる。痛みの持続は数秒にすぎないが,激痛のたびにうめき,口を大きくあけ,顎を左右に動かし,顔をゆがめるだけでなく首を左右に振り,体を前後屈させる。自分で経験してみて,チック様の妙な動きをせずにいられないほど大変な痛みであるということがしみじみわかった」
これは臨床神経学の大家,塚越廣教授が自身の体験を1977年の「脳と神経」に書かれた文章である。このように三叉神経痛(疼痛性チック)というのは大変な痛みと苦しみを惹き起こすもので,「こんなに痛むなら死んだほうがまし」という人もいる。従来,三叉神経痛の原因は不明とされ,治療も対症療法やブロック治療,末梢神経切断術が行なわれ,その結果は必らずしも満足すべきものではなかった。ところが近年,米国ピッツバーグ大学脳神経外科のPeter Jannetta教授により後頭蓋窩における神経圧迫血管を転置移動する手術で激痛発作が完治することが発表された33〜37)。以来,いくつかの追試を経て2,6,19,20,72)この神経減荷術は根治的治療法として確立され,"neurovascular compression theory"は三叉神経痛の真の病因として認められるに至った。本稿では三叉神経痛の歴史的背景,病因論および治療法の変遷,さらに自験例の分析を含めて総括的にまとめてみたい。
Abstract
Trigeminal neuralgia (tic douloureux) is a well-known disease entity characterized by unilateral, proxysmal, lancinating pains in the distribution of the trigeminal nerve. Since the 19th century, numerous medical and surgical treatments have been tried and yet none has provided satisfactory results.
This report gives an overview of the various surgical procedures for the aleviation of tic pain, such as peripheral neurotomy or neurectomy, Gasserian ganglionectomy, retro-Gasserian rhizo-tomy, trigeminal tractotomy, radiofrequency coag-ulation and so forth.
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