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I.右と左の識別
右と左の識別は,生物の本質的な特性といえる。Fig.1は,無生物の代表ともいうべき,1個の石塊を写真にとり,正像と裏焼きした鏡像を並べたものであるが,どちらが正しいものかを知ることは,無生物であるがゆえに不可能である。しかし,Fig.2の場合は,これと異なっている。片側の大脳半球にきずのあるこの人脳も,一見どちらが正像で,どちらが鏡像かわからないように思われるが,この患者は失語症を呈していた(Marie,1906)ということがわかれば,aが正しいものであることがたちどころに判明するのである。しかし,この場合には,観察者自身が,左右を正しく識別できていることが前提条件として必要である。それでは,もし,観察者自身が,左右を識別できなくなってしまった場合はどうであろうか?今ここに,生後ただちにあらゆる他人から隔離され,自分の利き手が右か左かわからない人間がいると仮定しよう。この人間に音声だけで,右左を識別させるには,いったいどうすればよいか,というのが,問題である。この人間は,自分の利き手が他人のそれと同じかどうかを知らず,また自分にsitus inversusがあるかもしれぬ,と疑っていた場合,他人から隔離された状態では,右と左を,まったく識別できないように思われる。
Abstract
The biological significance of right-left differ-entiation in living organisms was first noted by French scientists in the midst of the last century. Pasteur, from the viewpoint of molecular chem-istry, discovered that the optical isomers of citrate crystals can be differentiated only by living organisms, bacteria and Pasteur himself. On the other hand, Dax and Broca found only the left cerebral hemisphere can speak.
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